むかしむかし、あるところに田吾作という男が住んでおった。
田吾作は村の名産品であるカブを作る農家だった。
このカブは、食べてもおいしい上にそのまま植えると、さらに増えるかもしれないという不思議な特性を持っていた。
しかし、田吾作の生活は楽ではなかった。その原因は重い年貢であった。
全然、生活が楽にならないだよ〜
なんでこんなに年貢を取られなきゃならないだぁ
田吾作は毎日嘆きながらカブを育てていた。
ある日、田吾作は友人の権兵衛に会い、年貢の厳しさを愚痴った。
田吾作ぅ、おめぇまだ年貢おさめてるだか?
権兵衛、おめぇ何言ってるだか?
すると権兵衛は、驚きの方法を教えてくれた。
お殿様に『兄さん』と呼びかけるだけで、年貢を免除してもらえるだよ〜
なんでもお殿様は弟が欲しかったが、それが叶わなかったため、誰かが「兄さん」と呼ぶと大変喜び、年貢を免除してくれるという話だった。
そんなバカな話あるかいな〜
田吾作は信じられなかったが、権兵衛の立派な服を見ると、どこか本当のようにも思えた。
それでも田吾作は疑念を拭えなかった。
お殿様がそんな大盤振る舞いするはずがない。裏があるに決まってるだぁ!
結局、田吾作は権兵衛の話を信じず、これを詐欺か何かだと決めつけた。その日から、田吾作は権兵衛を避けるようになった。
ところが、しばらくすると村の様子が変わっていった。
権兵衛の話を信じた村人たちは、お殿様のもとを訪れて「兄さん」と呼び、次々に年貢を免除されるようになった。
年貢から解放された村人たちは、カブをどんどん栽培し、村は豊かになっていった。
村の家々は立派になり、村人たちは新しい服を着て、笑顔にあふれていた。
一方、田吾作だけは相変わらずボロボロの服を着ていた。
みんな、きっと何か悪いことをしてるに違いないだぁ。お殿様がこんな大盤振る舞いをするわけがないだよ〜
田吾作は最後まで権兵衛の話を信じず、年貢を納め続けた。
その結果、田吾作だけが貧しいままだった。
村人たちはお殿様に感謝し、「ありがたやぁ、兄さん」と笑顔で暮らしたとさ。
めでたしめでたし
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